真言密教とは、どんな教えでしょう?

第1回

 教王護国寺(東寺)や高野山、そして何と言っても弘法さん(弘法大師空海)で親しまれている真言宗は、いまから1190年前に弘法大師によって唐(中国)より伝えられました。
 当時我が国では、「南都六宗」と呼ばれる六つの宗派が平城京(奈良)の東大寺、西大寺、興福寺、大安寺等を中心に学ばれておりましたが、これらの教えにはなかったいくつかの、全く新しい、画期的な教えが、弘法大師によって伝えられたのです。
 では、何が、どのように新しく、画期的なのでしょう?

(1)大日如来の登場
 真言宗以前の各宗において、お釈迦様を初めとして、毘盧遮那仏(奈良の大仏様)等の仏様がまつられておりますが、これらの仏様はいずれも修行の成果として仏になられた、専門用語で「報身仏(ほうじんぶつ)」と分類される仏様です。
 これに対して真言宗は、大日如来をすべての仏の中心に据え、多くの仏は大日如来の優れた功徳を部分的に象徴化したものであると考えます。この大日如来は「法身仏(ほっしんぶつ)」と分類され、教え、真理そのものが姿をあらわした仏様であり、大日如来を中心とした仏の世界、「金剛界」「胎蔵」二つの曼荼羅と呼ばれる幾何学的な世界観の成立とともに、新たな仏が登場し確立されました。

(2)真言、仏の言葉
 真言宗はそれ以前の宗派を顕教と呼び、密教と対比しています。
顕教は、理解しやすい、私たちの言葉、「妄言説(もうごんぜつ)」によって教えを説き、密教は、容易には理解できない呪文のような真言(マントラ)、「如義言説(にょぎごんぜつ)」によって教えを説きます。
 「妄言説」は悟りの世界、仏様の世界そのものを説き明かすことはできません。近年、車に搭載されるカーナビは、目的地の詳細な表示が性能の目安の一つとなっています。目的地が明確に表示されなければ、到達できたかどうかが分かりません。
 真言宗の「如義言説」は、成仏までの経由地と目的地を正確にあらわす高性能なカーナビですが、その解読方法がいささか複雑で、ゆえに「密教」と呼ばれるのです。

(3)最大の特徴、即身成仏
 法身大日如来という画期的な仏と、真言という優れた言葉をもつ真言宗は、「私達は心の中に、すべて等しく仏になる種を持ち、生活しているこの身このままで仏になれる」と説いています。
 日常生活の忙しさに隠された仏の種をどうやって見つけ、どうやって育てるか。そのお話はまた、次回に譲ります。

合 掌  

(鹿鷺山 笠置寺 副住職小林慶昭記)


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